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2010年10月28日 (木)

映画「ヘヴンズストーリー」感想

10月16日(土)に渋谷ユーロスペースにて、光石研さんもご出演の映画「ヘヴンズストーリー」を観てまいりました(その後、23日にも光石さんの舞台挨拶付きで前半のみ鑑賞)。

以降、感想ですが一部映画の内容に触れている部分がありますので、未見の方はご注意ください。

映画「ヘヴンズストーリー

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2010年/日本/監督:瀬々敬久/脚本:佐藤有記
出演:寉岡萌希、長谷川朝晴、忍成修吾、村上淳、山崎ハコ、菜葉菜、栗原堅一、江口のりこ、大島葉子、吹越満、片岡礼子、嶋田久作、菅田俊、光石研、津田寛治、根岸季衣、渡辺真起子、長澤奈央、本多叶奈、佐藤浩市、柄本明 ほか

家族を惨殺された8歳の少女サトにとって、妻子を殺した犯人を「この手で殺す」と宣言するトモキはずっと英雄だった。そして事件から8年後、サトはトモキに会いにある島へ向かうが……。(映画.comより引用)

まず思ったのは、4時間38分の長尺ながら、途中全く飽きることなく物語に引き込まれて長さを感じなかったこと。むしろ、登場人物の1人1人の10年間をこれだけ丁寧に描くのによくこの時間で収まったなという印象でした。

この映画は、ある事件の被害者遺族と加害者、出所後の加害者を養子にする女性、別の事件の被害者遺族である少女、復讐代行業の男を中心とした群像劇となっています。

それぞれをもう少し詳しく書きますと、

トモキ(長谷川朝晴)…妻子を殺された男性。殺された直後は犯人に復讐すると誓うが、その後出会った女性と再婚、娘1人。

ミツオ(忍成修吾)…妻子殺しの犯人。犯行時未成年だったため、早い段階で出所。出所後、刑期中に手紙を通じて知り合った恭子という人形作家の女性の養子になり、アルツハイマーにかかった恭子の介護をする。

サト(寉岡萌希)…父・母・姉を一度に殺された少女。犯人は犯行後自殺。テレビでトモキが犯人に復讐すると言う姿を見て憧れを抱く。

カイジマ(村上淳)…男やもめの警官。副業で復讐代行業をしている。息子が1人。正当防衛で犯人を殺してしまったという過去を持ち、その後もその家族にお金を渡し続けている。

恭子(山崎ハコ)…人形作家の女性。テレビで聞いたミツオの言葉が気になり刑務所のミツオに手紙を送り続け、出所後養子にする。若年性アルツハイマーを発症し、出所後のミツオに介護してもらう。

私はこの中でトモキとその家族の側になって考えてしまい、どうしてもサトには同調できませんでした。サトは自分の家族を殺した犯人が自殺してしまったことで、復讐の対象を失ったため、トモキの復讐を一緒に果たすことを自分の復讐と置き換えているようで。

トモキはミツオが出所した頃には、別の女性と結婚し、娘も生まれささやかながらも幸せな生活を送っていたのですが、そこにサトが現れ復讐をけしかけるのです。自分の復讐のためなのか、トモキにヒーローでいてほしかったのかはわかりませんが、せっかく新しい幸せをつかんだトモキに復讐をけしかけるのはやめてほしいと思いました。
結局復讐を果たしたことで、最後には自分の英雄であるトモキを失うことになり、復讐は悲しみの連鎖を呼ぶだけだと身を持ってわかっただろうし、最後まで観ると、サトも凄惨な事件の被害者で、家族の愛に飢えた同情すべき少女だったことを思い出さされ、これからのサトを応援したい気持ちになりましたが。

個人的には、トモキの新しい奥さん、タエにすごく共感してしまって。過去に父親から虐待を受けたことで右耳の聴力を失ったギタリストの女性なのですが、トモキと出会った時はすごく荒れててcoldsweats01これまた愛に飢えた女性なのですが、トモキと結婚して娘ができたことで落ち着くんですよ。なんか、ちょっと私にもタエちゃんみたいなトコがあった気がして、この作品の中で一番印象に残っています。
それにサトと出会ったトモキが、タエと娘を置いて家を出て行った場面では、娘と夕食をとりながら涙が止まらなくなってしまうタエのシーンがあるんですけど、子供の前だから泣きたくないし、泣きたいけど子供には夕飯を食べさせなきゃいけないし、みたいな母親の心境が痛いほどわかって、私もホロッときてしまいしました。タエを演じた菜葉菜さん、すごく気になるので今後もチェックしたいと思ってます。

それから、山崎ハコさん演じる恭子。

テレビで聞いたミツオの言葉が気になったことがきっかけで、獄中のミツオに手紙を送るようになり、そこからミツオと交流を持ち、出所後も養子として引き取ることになった人形作家の女性です。ミツオを怖がることなく愛を持って接します。

ミツオは出所後、様々な仕事を探しますが凶悪事件の犯人とあって、どこでも雇ってもらえません。その1つが光石研さん演じるシオヤの縫製工場で、シオヤの「みんなオマエが怖いんだよ」というセリフは世間一般、私たちの気持ちを代弁していますが、だからこそミツオに偏見なく無償の愛を注ぐ恭子の在り方に感動しました。

そして、母親のような無償の愛が人には必要なのだと強く感じました。

この5人以外の、家族や友人など周囲の人間が、色々な場面で交差しているのがまた素晴らしかったです。例えば、光石さんは長めの2シーンご登場なのですが、1シーン目はカイジマたちとの花見の席でトモキの奇行を目撃し、2シーン目ではミツオと話すという具合。

それぞれのキャストが違う場面で、違う登場人物と関わっていて、おー、こんな所にもこの人がsign03というような。。。片時もスクリーンから目を離せませんでしたよ。そしてことごとくキャストが豪華でした。

個人的には、復讐屋のカイジマからただただ走って逃げる津田寛治さんとか、カイジマの息子に鞄を盗まれ、追って捕まえボコボコにする菅田俊さんとかがツボでした。

それから映像がとても美しいです。

時折挟みこまれる空と雲の映像や、桜吹雪、木漏れ日、輝く水面、雪に覆われた山。。。自然の美しい風景が素晴らしくてずっと見ていたいと思いました。

また、そういった自然の風景や、遊ぶ子供たち、車窓からの眺めや手持ちのカメラで映し出される映像は、9月にアテネフランセで上映された時に鑑賞した「少年版私慕情 国東 京都 日田」に通じるものがあり、その頃から瀬々監督が撮りたいものはあまり変わっていなくて、今回も本当に瀬々監督が撮りたいものを撮ったんだなという印象を受けました。

アテネフランセのトークショーで監督が「自主映画を撮りたい」と思って「ヘヴンズストーリー」を撮ったと仰っていたのですが、この映画不景気の時代に、本当に自分の撮りたいものを、撮影期間を1年半もかけて撮ったということはすごいことなんだなと改めて思いました。光石さんが先日の舞台挨拶で「こんな時代にこんな映画を。。。」と仰ったのもわかる気がします。
アテネフランセの特集上映とトークショーはすごく行っておいてよかったと思いました。

その他、思い出される印象的なシーンの数々。。。

・江口のり子さんが(確か)男の人を追いかけて、アパートの2階から飛び降りるシーン。降りてきた江口さんを見たら、妊婦さんだったwobblyビックリしたーheart02即流産でしょーフツー。

・ミツオが施設に入った恭子に別れを告げるシーン。自分はベッドに隠れて両手に持ったパペットがダンスをする。この映画で唯一涙が溢れたシーン。

・サトがトモキのアパートのドアに耳をつけて中の音を聴く表情や、ゴミを漁ってトモキの吸い殻を見つけ出して口にくわえた恍惚の表情が妙にエロい。さすがピンク四天王。
萌希ちゃん、「仮面ライダーオーズ」に出た時は特に何とも思わなかったけど、この映画では全然違ってた。

・カイジマの息子が小さい頃。オモロくてかわいい。

・柄本明さんのシーン。無愛想なじいちゃんが最後の泣くシーンで色んな想いが溢れだす感じがすごかった。

さて、映画のラスト。

タエと娘のことが最後まで気になっていた私ですが、最後の章では、寂しくも優しい雰囲気に包まれていたので満足でした。サトちゃんについては既に書いたとおり。希望の持てるラストだったと思います。

テレビの続編のような映画が多い中、この映画を観て、「こういうのが映画って言うんだな」と思わせてくれた映画でもありました。ぜひ映画館で観ていただきたいです。

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